インドネシアのサンタロレンシア中学校との交流

小田原市立新玉小学校の渡辺まき子先生からご報告の記事を頂きましたので、こちらに掲載させて頂きます。

1 プロジェクト∞への参加のきっかけと動機

「プロジェクト∞(無限大)」は、世界の学校が国やさまざまな壁を超えてつながり、「Well-beingあふれる学校」について考えるプロジェクトです。募集を知ったとき、「学校をよりよくするために世界中の子どもたちと共に考えるって、自分が一番やりたいことだ」と思い、すぐに校長に相談し個人応募をしました。すると「ぜひクラスのお子さんたちも」とOECDパリ本部からお声かけいただきました。東京学芸大学の事務局から校長へプロジェクト参画の依頼状が出され、担任する4年生とインドネシアのサンタロレンシア中学校との交流が始まりました。

2 交流に向けて

交流に向けた大人同士の初顔合わせ会は10月6日にオンラインで行われ、OECDパリ本部の方々も入って英語オンリーの刺激的なひとときでした。「まずは生徒同士が出会う場を設定しよう」とその場で予定表を見て日にちを決めました。インドネシアと日本は時差が小さく、中学校の始業時刻も早いため、本校の3時間目に開始を合わせてもらえたことがありがたかったです。

3 交流の実際

【1回目 10月17日 学校紹介】

 4年生は英語の短文で実物や絵、画像を見せながら学校や小田原市、自分が好きなものについて紹介しました。インドネシアの生徒たちも学校を紹介し、スライドに日本語も添えるなど工夫して自分たちが取り組むプロジェクトのテーマについて話してくれました。

一つひとつ、何ができるかできないか確かめながらの交流でした。例えば、サンタロレンシアのウェリー先生が、自己紹介を書き合えるようにジャムボードを用意してくれましたが、本校のシステムが学校外の作成者のものを受け付けないことが、やってみてわかりました。

1回目終了時点では、その先の展開は決まっておらず、学級通信にも、交流したことを紹介した上で「今回の交流をもとに、各校の子どもたちの受けとめも踏まえながら相談していきます。私にとってもチャレンジです。4年生とともに楽しく交流し、視野を広げられるといいなと考えています。」と書きました。打ち合わせを行い、2回目以降は「学校のウェルビーイング」における中学生のプロジェクトテーマをお題として各校が考え、スライドを見せながらプレゼンし、質問し合う形をとることにしました。3月まで月1回交流しようと一気に日程を決めたことが継続の決め手になりました。

【2回目 11月20日 テーマ「睡眠」】

 4年生は睡眠についてフォームのアンケートに答え、その結果から見えてきたことを日本語で発表しました。スライドには英語も入れ、英語を見ながら発表を聞いてもらうようにしました。このテーマは12月の保健の学習ともつながっていきました。

【中止  12月7日】 

 前回と日にちが近すぎて準備が間に合わず、大人の打ち合わせに変更しました。

【3回目 1月15日 テーマ「学び方」】

 4年生は事前学習で、国語、算数、理科、社会それぞれについて、どんな学び方のとき「身につく」と感じるか、どんな学び方のとき「楽しい」と感じるかについてアンケートをとり、その集計結果からわかることを共同編集してスライドにまとめ、当日日本語で発表しました。この回から、個々にオンラインにつなぐことができたのでインドネシアの発表も見やすくなりました。お正月明けだったのでインドネシアの生徒が質問してくれて、おせち料理やお雑煮など日本のお正月の食べ物や人気のアニメについても話題になり、楽しい時間になりました。

 教師にとっても、学び方についての子どもたちの願いやニーズを知る機会となり、算数で一人で取り組む時間を増やしたり、社会でグループ学習を多くとるようにするなど授業改善にもつなげました。

【4回目 2月19日 テーマ「タイムマネジメント」と「インターネットやAI」】

 事前学習では、まずタイムマネジメントが機能している場面とうまくいかない場面、インターネット利用のプラス面とマイナス面について各自が考えを端末上に書きました。各班でどちらかのテーマを選、書かれた意見を読みながらどんなことが言えそうかを話し合いました。交流当日は、各自1~2文ずつ担当し、英語と日本語の両方でスライドに合わせて話すことに挑戦しました。 インドネシアのプロジェクトチームの発表のときは、東京学芸大学の事務局メンバーがチャットにおおまかな日本語訳を入れてくださるので助かりました。 インターネットの利用について考えたことは、直後に実施した「スマホ・携帯安全教室」にもつながりました。

【5回目 3月18日 MVP紹介】 

 事前学習では、これまで4回交流してきた経験を踏まえて「未来の学校がどんなふうだったら誰もが楽しく幸せか」について考えました。連想が連想を呼び、黒板に書ききれないほどの願いやアイデアが出てきました。そこで、そのアイデアを表現する方法もたくさんあることを知らせ、コンセプトと表現方法が合う仲間を探して8つのチームを結成しました。「こんな学校だったらいいな」の内容実現するとどんなよさがあるかをチームで検討し、紙芝居、コラージュ、マンガ、短い劇など自分たちが決めた方法でMVP(成果物)を制作しました。「小学生には小学生なりの考えがあるから、自由な発想で表現してほしい」とOECDパリ本部から応援を受けたことが心強かったです。子どもたちがチーム内で自分の思いを話し合って納得して活動できるように、各チームを回って声をかけ、必要なものを用意し、サポートしてきました。オンライン交流最終回では、本校の持ち時間は10分。各チームがアイデアとMVPを日本語と英語でプレゼンしました。子どもたちのMVPには「自由な服装」「快適かつ遊び心のある校舎」「ニーズに合った豊富な蔵書」「選べる昼食」「自由な時間」「一人で静かに休憩できる空間」「老若男女が楽しめる校庭」「ゲームの貸し出し」「スマホ等の持ち込み」などの願いが表現されていました。コラージュの中には、インドネシア語の挨拶も書かれていました。サンタロレンシア中学校の生徒たちからは、生成AIや睡眠、タイムマネジメントなどこれまで扱ってきたテーマのMVPとしてインタビュービデオやウェブサイト制作の紹介がありました。ウェリー先生からは「新玉小から出たアイデアの中に、インドネシアですでに叶っているものもありますよ」とのコメントももらいました。田熊さんからは「日本の新玉小学校の小学生たちもすごくがんばったね。ありがとう。」とおほめとねぎらいの言葉もありました。

(新玉小学校の発表資料から)

4 交流を終えて

 この「プロジェクト∞(インフィニティ)」は自由な発想で共創することが期待されているため、未知の冒険の旅でした。一緒に組んだウェリー先生が、東日本大震災後、東北の高校と生徒同士の交流を行った経験があり、意欲的かつ柔軟な発想ができ、にこやかにリードしてくださったので、大いに助けられました。最後に「もう会えないと思うと、さみしくなる」とインドネシアの中学生が言ってくれたとき、ぐっときました。

 最後の感想では「いろんな考えをまとめられるインドネシアの中学生たちはとってもすごいなと思った。私たちも大成功してよかった。」「発表して、インドネシアの人たちにも自分たちの気持ちが伝わるようにがんばった」「インドネシアの中学生は難しいことについて調べられていてすごかった。私も難しいことに挑戦したいと思った。」「人によっていいと思う学校は違うけれど、『よりよい学校』ということは変わらない。『いいな』が当たり前になるかもしれない。」「たとえ国が違っても、みんな『学校がよりよくなればいいなあ』と考えている。何度も交流して、お互いの考えや気持ちが、国の言葉が分からなくても伝わってくるような気がしました。」などの記述がありました。海外の生徒とつながって学ぶよさ、母語以外の言葉で話してみるドキドキ感、自分たちのアイデアを自由な方法で表現する楽しさ、国を超えて一緒に未来を共創する充実感など、それぞれに何か得るものや残るものがあったのでは、と思います。貴重な機会をありがとうございました。