OECDからのメッセージです!ぜひお読みください♪
*******
2023年10月13日、「OECDさんすう数学ラーニングコンパス」を、参加国の皆さんとローンチさせて頂きました!
「OECDラーニングコンパス」同様、日本含め世界中から貢献くださった皆さんの「叡智」を集めたカタチです。本コンパスに、法的拘束力のようなものはありませんが、各国の参加メンバーの皆さん曰く、「現時点(2023年)において、さんすう数学の教育に関する未来のビジョンに対する<世界の総意・世界の潮流>として意味・意義のあるアウトプット」と評価頂いています!
また、本コンパスのフレームワーク(学びの範囲)とPISA2022数学リテラシーのフレームワーク(評価の範囲)では、カバーされる範囲は、もちろん異なりますが、ミシガン州立大学のBill Schmit教授が双方の専門家会合に籍を置いて、双方のフレームワークに根底にある「概念の整合性」をとってくれています。
お披露目に際して、3つの国の事例を紹介しました。
第一は、米国カリフォルニア州の事例です。
現在、世界が注目している「カリフォルニア州数学カリキュラム改革」の現場における実態を、「数学さんすう苦手意識のある生徒」を置き去りにしない対応として、生徒の視点をSofia Michelis さんと Layla Esaさん から、そして、教師の視点を Sarah Nolanさんから提供。その後、カリキュラム改訂の中心的な議論を、脳科学の最新の研究などをもとに牽引してきたスタンフォード大学のJo Boaler教授に紐解いてもらいました。最近注目の「成長マインドセット」などの概念を、教科のリフレーミングにあてはめた先進的な数学カリキュラム改革の事例です。
二つ目の事例は、ニュージーランドからです。
国際共創プロジェクトに参加してくれているManamiさん(現在、日本からニュージーランド留学中)が、生徒の声代表として参加してくれました!(彼女の感想も、以下↓にあります!)その他、教師の声を、Zac Rutledge さんが、色々な手法を教室で駆使する様子をZoom画面上でシェアしながら語ってくれました。そして、専門家として (元行政官)現在コンサルとして活躍中の Vince Wright さんに紐解いて頂きました!このセッションでは、特に、中高の数学の授業が、計算式を解く(Procedural knowledge)ための時間に使われがちな中、いかに、現実社会と結び付けることを入口として、数学の見方・考え方(Epistemic knowledge)や抽象概念の理解(Conceptural understanding)へ結び付けてゆけるのか、具体に迫りました。
三つ目の事例は、ポーランドからです。
現在、E2030プロジェクトのさんすう数学部会の会議で、「生成AIの時代におけるさんすう数学のあり方」が議論されている最中です。そこで、国家プロジェクトとして、ポーランド政府による調査プロジェクトから、Wojciech Wątorさんは、どういった状況下で、生徒(それぞれ事前の数学の基礎知識が異なる中で)にあわせて、どのようにChatGPTなど活用できるのかの事例紹介があり、その後、政策策定者として、ポーランド教育省のMałgorzata Szybalska さんから、調査プロジェクトの現時点での示唆として、倫理的配慮を政策に反映させる必要性等を 紹介して頂きました。
直接、各国の発表を聴いてみたい(チャレンジしてみたい)方は、こちらコチラ(→ 録画(英語))になります!
今後、さんすう数学カリキュラム国際比較報告書を発行予定です。日本からの分析結果や事例提出など、国際発信にご興味ある方は、こちらまで→(If you are interested in contributing, please contact the OECD E2030 Project Secretariat at education2030@oecd.org. )
それでは、以下、ローンチに参加くださったManamiさんの感想と、本PJの「さんすう数学の顔!」おとうさん(Nishimura教授)の一言です!
—–
By Manami Tamekane
今回、私の体験をまた共有させていただける機会をいただきありがとうございます。
数学の授業で感じた日本とニュージーランドの違いについて話させていただきました。
ニュージーランドの学校で私が取ったクラスでは、主にグラフの読み取りや確率について学んでいます。グラフからどのようなことが読み取れて、その情報からどのようなことを推測できるかや、確率では自分が導き出した数字や提示された数字が表している意味について学んでいます。問題は実際の魚の捕獲量などの調査結果やチョコレートの量り売りなどの日常に関わる例が出されます。
グラフの解説や導き出された数字を比べてどのようなことがわかるのかなどについて文章で説明する力が求められています。テストも文章を書くことが非常に多く、日本との違いを大きく感じています。
日常から問題が作られている点と自分の意見を持ち文章を書くということは、私にとって数学を身近に感じさせてくれました。論理的に考える能力が非常に必要にされていると感じます。
先生が単元毎やテストごとに評価基準を伝えてくれます。記述テストは評価基準が曖昧になりがちというような印象がありますが、全くそのようなことは感じません。
評価基準が明確でとても授業に取り組みやすいです。
私は日本の数学の授業では、数学を学んでも生活で使わないし必要ないだろうと思っていました。しかし、ニュージーランドにきてから数学の時間を楽しめるようになり、数学でどのような力が身につくのかや数学を学ぶ意味を知れたと思います。
By Keiichi Nishimura
意思決定をするときに数学を活用する上で鍵となることの一つは,自分で条件を仮決めすることです。その条件に応じて答えは変わってきます。こういう条件だとこうなう,ああいう条件だけとこうなると,条件と結果をセットにしながら吟味し,意思決定するわけです。
一方,日本の数学の授業では,問題場面は現実なものになっていても,答えが一つに決まるように,条件があらかじめ問題文に示されていることが多いです。これは試験でこういう問題がでるから練習しておこうという発想の弊害かもしれません。あるいは,数学は答えがひとつに決まるものという,これまでの数学の学習に対する固定観念のせいかもしれません。
Manamiさんのニュージーランドでの学びは,このような日本の状況に大きな一石を投じています。