日本OECD共同研究では、本年度から、未来の先取り実践・実装である「プロジェクト無限大」「壁のないあそび場「座」」をはじめ、様々な現場の取り組みから、未来の政策研究・政策提言につなげるための、テーマ別ワーキンググループ(TWG)を組成し、研究活動を強化しています。この一環で、TWG3(学校(校長リーダーシップ、学校経営・運営、教育・福祉連携、外部共創))のワークショップが開催されました。
下記、後藤先生からのご報告となります。
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TWG3座長の後藤です。2024年8月28日、TWG3のワークショップ「困難をかかえた多様な子どもたちを包摂できる教育制度、学校の在り方、教員の働き方、教員のウェルビーイングとは①」を開催しました。今回のスピーカーは、宮城県の元中学校校長の玉野井ゆかりさん、大阪府の小学校教員の谷垣真実さんでした。参加者は、スピーカー2名のほか、教員の方が4名、事務局から3名、共同座長の柏木先生、そして私の合計11名でした。
最初に玉野井さんから、これまでの教職経験における不登校生徒との関わりや、校長の時に運営することになった校内教育支援センター(「学び支援教室」)に来る子どもたちとの関わりから学んだこと・感じたことを話して頂きました。要点は以下の通りです。
・「学び支援教室」(以下、「教室」とする)は不登校の傾向が続く子が学校に来た際に過ごすことのできる、在籍学級とは別の部屋。専任の教員が配置されている。
・「教室」では、他の生徒や教員と話をすることが一番の目標とされていた。そのため、ボードゲームをおいておいて常にゲームをできるような環境を整えながら、子どもたちが自分のペースで学習を進められるようにしていた。
・居心地のよい場所になるよう、校長として午前・午後とも訪問するようにしていた。在籍学級の担任にも訪問するよう勧めていたが、乗り気でない教員もいた。
・登下校時には他の生徒と合わないように急いで帰る子もいたりするのを見ると、「教室」が居心地のよい場所になっても、学校全体は居心地のよい場所ではなかったのかもしれない、と感じた。
・不登校だった子が卒業すると、通信制高校に通う子がほとんどである。卒業後に遊びに来てくれると、明るくなっている。その変化を見ると、今の学校システムはそうした子どもたちにとっては「イケてない」場所なのかもしれない。
・「教室」での支援に乗り気でない教員の背後にあるのは、形式的平等主義のマインドなのではないか。
次に、谷垣真実さんから貧困や虐待などの状況にある子どもたちが多く通っていた学校での、「こども支援コーディネーター」(以下、「コーディネーター」とする)としての経験を中心にお話をうかがいました。要点は以下の通りです。
・コーディネーターは、子どもの貧困や虐待の事案が生じたときだけでなく日常的に家庭や地域、警察などと連携しながら学校内で中心となって動く加配教員である。
・貧困家庭の多い学校に赴任直後は、何から手を付けていいか分からなかった。しかし、教員同士は協力的で、子どもたちには母親・父親のように接していた。
・子どもたちのSOSは、最初は外部からの通告で発覚することが多かったが、しだいに教師からの報告が多くなり、子ども自身から発せられるようになってきた。声を上げられるように学校全体で取り組んできた成果といえる。
・教員は、なんでも学校だけで完結しようとしがちである。
・コーディネーターは、学校外の様々な機関の人と関係を作っておくことが重要。
・コーディネーターがいることで、役割分担が明確になる。担任が抱え込む必要もなくなる。担任は虐待等の事案が生じたときに家庭との関係維持を想定してうまく対応することができなくなる。今は、別の学校で担任をしており、それを実感する。
・コーディネーターとしての働きも、それを遂行する資質だけでなく、コーディネーターを活かす組織があったからこそだと感じる。
その後、参加者とともに意見交換を行いました。困難を抱える子の多い学校では教員どうしでケアしあう関係性が重要であること、教員間で協力的な関係を築くためにケース会議などを活用すべきこと、ただし、単に情報を共有して終わるのではなく、役割分担して対応を進めていく場であることを見失ってはいけない、といったことが話し合われました。このほか、「同じペースで学ぶこと」を前提とする学校のあり方をどう捉えればよいか、外国につながる子が多い子どもの受け入れは専門性が高いため研修の機会が重要、などの意見も出されました。
今回の参加者の意見を集約すると、ベースラインが確保されていない子どもたち(貧困・虐待など)にとっては、従来型の学校の良い部分(多様な子どもたちが相互作用しあい学び合う場としての学校・学級)を享受できるように努力すること、しかし、それ以外の理由で不登校になっている子たちの状況を見ると、より柔軟な学校のあり方を探っていくことが求められているようです。ただし、この点は教育の社会的意義と内実にもとづくより精緻な議論が必要になると考えます。「従来型の学校の良さ」と「柔軟な学校のあり方」の境目をどう見極め、学校のあり方や教職員の体制を考えていくかを次回以降の検討課題として行きたいと思います。

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今後のTWG3のワークショップの予定は以下の通りです。
ご参加の皆様は、下記からお申し込みください。多くの皆様のご参加をお待ちしています!
https://forms.gle/e2Q7aQ6GvGrENuXv6

テーマ「困難をかかえた多様な子どもたちを包摂できる教育制度、学校の在り方、教員の働き方、教員のウェルビーイングとは」
TWG3:第2回 9/6(金) 16:30~18:00
スピーカー①:岸本琴恵氏(スクールカウンセラーの立場から、学校が多職種・多機関連携を進めるうえで留意すべき点について発信されてきました。)
スピーカー②:竹本茂氏(元校長。「子どもの最善の利益」を中心とした校種間連携や、多様性・相互承認を重視した学校運営に取り組んでこられました。)
TWG3:第3回 9/9(月)17:00~18:30
スピーカー:松浦加代子氏(滋賀県湖南市教育長。様々な困難を抱える子どもたちを幼児期から成人期に至るまで支援する「発達支援システム」を確立・運用されてきました。)