今回のイベントは、「こどもの居場所」「ファシリテーション」というキーワードに集まった参加者の皆さんと、こどもたちにとってより良い環境を一緒に創ろうという時間です。
<なぜファシリテーションが大切なのか>
オープニングでは、全体進行を担当する伊熊公一さん(こども・若者の居場所づくり座共同座主、元内閣府「子供と家族・若者応援団表彰」等選考委員会 委員)から、こどもの居場所や、居場所づくりは、なぜ大切なのかについて、国の動向や様々なこども若者に関する報告書なども踏まえながら、これまで若者の支援に携わってきた中で感じていること、考えていることについてお話がありました。
まず、日本のこどもの居場所が危機的状況ということを背景に、こどもの居場所づくりに関する指針が閣議決定されたこと。また、こども家庭庁から「こども基本法に基づくこども・若者、子育て当事者の意見反映」について通知が出されたこと。このような社会の流れの中で、今こそファシリテーションが必要ではないか、ということが、次の3つの視点から述べられました。
①こどもが自律できる社会に向けて
こども大綱の中で、こどもの自律の重要性が示されていること。
こどもの自律は人権尊重の基本であること
自律とは、自分の意思を表明することであり、そのための環境づくりとしてファシリテーションは有効ではないか、ということ。
②こどもや若者が関わる関係者を増やすため
こどもや若者に関わる大人には、より良い人生の営みを支援する専門性を高めていくことが必要であり、それにはファシリテーションの考え方やスキルが必要になるのではないかということ。
③こどもを真ん中にした成育環境をつくるため
参加ではなく参画。「こどもが主体に、大人と一緒に決定していく」ことができる環境づくりが大切。ファシリテーションのスキルとマインドを知り、活用することで、こどもにとって安心・安全な場づくりが可能となり、寄り添う大人がいることによる安全と安心を感じやすくなる。安心・安全な環境づくりから、こどもは自己実現へ向かっていきやすくなる。
何より視聴させていただいた「ランドセルのCM※」は、伊熊さんが今回のイベントに参加した方に伝えたいメッセージだったと思います。
※こどもたちが自分で好きな色のランドセルを選ぶ様子とその際の親子の関わりを追ったドキュメンタリータッチのCM。「キミが好きなの、キミが選ぼう。」というメッセージとともに、こどもの自主性や成長が描かれている。
<ファシリテーションをどうやって学校で生かしていくか>

では、ファシリテーションをどうやって学校で生かしていくことができるのか、について、次のスピーカーである、私、田山善堂(音楽教師⇒生涯学習センター⇒青少年健全育成行政⇒生涯学習行政⇒水戸市立稲荷第二小学校長)からお伝えしました。
音楽大学を出て、音楽教師になりたての頃の教師主導のガチガチの授業から、生徒の自由な発想を引き出す授業への転換は、ファシリテーションという言葉は知らなかった中で試行錯誤しながらたどり着いた方法だったこと。
行政での勤務にて、様々な課題解決型プロジェクトで答えのないことにファシリテーションの手法で取り組む人たちとの出会い。その後、学校に戻ったときに、多様な価値観がでるのが面白い道徳の授業さえ、いまだにひとつの答え(正解)に導こうとする場面との遭遇。
若手教師が急増しているなか、ファシリテーションの考え方とスキルを身につけることで、教師もこどもも幸せになれるのではないか。
こども同士も、ファシリテーションを身につけることで、お互いの違いを知り、多様な考えを認め、良好なコミュニケーションがとれるようになるのではないか。
安心・安全がクラスにあることで、こどもたちは生活面や学習面で、自己表現、自己実現に向かうことができるのではないか。
これらのことから、本校では、この後お話をいただく横山弘美さんを講師として招聘し、週に1回、15分間、ペアを作ってポジティブな話題について交互に話し合うファシリテーションタイムを導入した。ファシリテーションタイムを体験したこどもからは「あまり関わっていない人と会話ができて嬉しかった」「人と話す時にどうやって返事をしていいかわからなかったので参考になった」など嬉しい声が聴かれた。
また、今後は授業の中でも、ファシリテーションを取り入れることで、こども同士の考えを広げ、深め、共有し、つなげながら、物事を決定していく場面をたくさん作っていく。さらに、PTAの役員さんから、親もファシリテーションを学びたいという声があがり、これも家庭教育として保護者対象のファシリテーションを学ぶ場をつくる予定である。
今年度は本校のファシリテーション元年。伸びしろしかない。「こどもも大人も、ファシリテーターになろう」を合言葉に、失敗や試行錯誤を面白がりながら成長できる学校にしていきたい。という話をさせていただきました。
<こどもたちひとり一人を大切にするための「ファシリテーション」>

では、こどもたちひとり一人を大切にするための「ファシリテーション」とは、どういったものなのか。講師は、横山弘美さん(ホワイトボード・ミーティングⓇ認定講師、東京女子体育大学非常勤講師)。
横山さんからは、ファシリテーションとは、様々な課題について、対話や競技や議論を起こして協働や共創を進めていく、そのことによって合意形成、課題解決や価値創造など目指すゴールを創り出していくことで、広義としては、ひとり一人が本来もつ力を発揮する エンパワメントなチームづくりを進める技術のことと説明がありました。
ファシリテーションの凄さを改めて感じたエピソードとして、コロナで急遽出された休校宣言の翌日、全国の学校の職員室は大混乱だったはずだが、横山さんの学校ではホワイトボードに様々な情報、不安を可視化し合意形成にいたったとのこと。みんなで話し合い、納得しながら決めるのは大変だったが楽しかった、ファシリテーションがあってよかったとのことでした。このように、ファシリテーションのスキルは、学校現場はもちろん、ビジネス、若手育成、校内研修、市民活動、子育て支援から家族まで、生涯、様々な分野や世代にとって、どこでも活用ができるもの。また、国は令和3年、中央教育審議会答申でファシリテーション能力が教師に必要な資質・能力と記載された背景もあります。ただ、残念なのは、横山さんがこれまで携わってきたビジネス、医療、福祉等、様々な方々から、学校で会議の進め方を学んでこなかったという声をよく聞くとのこと。この経験から、こどもたちには、社会に出て役立つスキルを身に付けて欲しいと強く思うようになりました。
ここで、本日のメインである、「ホワイトボード・ミーティングⓇを体験してみよう」の時間になった。ひとりひとりの意見を大切に聴くこと、ホワイトボードに意見を書くことで可視化し、承認しあうこと、「質問の技カード」を使ったオープンクエスチョンで深い情報共有を進めることなどの説明の後、実際にペアになって、「好きな食べ物」「最近、頑張っていること」をテーマに、多様な参加者同士の対話が始まりました。初めての体験という方も多かったが、終始和やかな雰囲気の中でペアのインタビューが行われていた。実際に体験した方の感想として、「相手の話したいことが話せる雰囲気づくりと、それを共有するための空間づくりの大切さを実感した」「ひとつの話題から、その方の雰囲気とか、やりたいこととか、その人自身のことを少しだけでも感じることができた」「ファシリテーションで、相手のことを知れることがとても楽しかった」といった声を聴くことができました。
横山さんのこれまでのファシリテーターとしての体験をもとにしたお話と、ホワイトボード・ミーティングⓇの体験は、とてもわかりやすく有意義であった。また、ファシリテーションは、聞き合い、互いに承認しあうことで、相手の人権を尊重するという、横山さんの熱い想いを感じることができました。今回の参加者にとっては短い時間での体験ではあったが、横山さんからファシリテーションの魅力やその持つ力を実感できた有意義な時間だったと思います。
今回のイベントは、「ファシリテーション」「こどもの居場所」などのキーワードに集まった方々でしたので、参加した皆さんは、こどもたちの声を聴く方法を知り、こどもたちと一緒に未来の可能性に気づきたいと思えるようになったのではないかと思います。すべてのこどもに関わる全ての大人に届いて欲しい、そう思えるイベントになりました。
